乾性油の搾油

乾性油は植物の油脂であり、種子から搾油されたものである。あまり需要はないと思うけれども、搾油をしてみたいという人がいるかもしれないので、その方法についてメモを残しておく。10万円以上する搾油機、または近隣に搾油所があれば、それを使用するだけだが、ふつうはないと思う。ちなみに昔は町に搾油所があって、そこに原料を持って行って搾油してもらえたと私の母が言っていた。もしかしたら探せば今もあるのかもしれない。しかし、ここでは簡易的に搾油を試してみるという意図で書いてみる。

クルミ油

亜麻仁、ポピーシード、クルミ、サフラワー、サンフラワーが油彩画の乾性油として知られているが、荏胡麻、紫蘇、麻などもリノレン酸を多く含み乾性油となる。これらはほとんどは搾油機械がないと油を絞るのは難しい。しかし、唯一クルミは素手の力で搾油が可能である。まずはクルミからはじめてみる。クルミの油、いわゆるウォルナットオイルはイタリアが画家達が使用した油で、レオナルド・ダ・ヴィンチの油彩画も使っている。

ミルミキサーでクルミを粉砕する。ミルミキサーは家庭用の簡易なものでいい。

この粉砕したクルミを丈夫な布にくるんで手で絞る。ガーゼなどの薄い綿布では破れてしまう恐れがある。この例ではラミーという麻布を使っている。

クルミの場合は意外と簡単に油を絞ることができる。これはウォルナットオイルであるから、顔料と混ぜれば油絵具となる。キャンバスに塗ると、数日後にはしっかり乾燥してくれるであろう。ここまでなら小中学生の教室や、ワークショップで実行してもよいかと思う。くるみならどこでも手に入る。ヒマワリの種も、このように絞れるとものの本には書かれてあるが、よっぽど強い布がないと難しい。

ここから先はあまりやらない方がいいとは思うが、残り滓を溶剤抽出してみる。工業的にはノルマルヘキサンなどを使うのであろうけれども、アトリエにあるテレピンかペトロールを使用してみることにする。なお、ヒマワリその他、素手で絞れなかった種子があったら、最終的にこの方法で油を得られると思う。

ちなみに、溶剤をかけてしまったらもう食べない方がいいと思う。

油脂が溶剤に溶けるまで、しばらくの間待ったあと、溶剤と一緒に絞る。クルミの滓なども出てきてしまうが、それはかまわないでおく。

数日かけて溶剤を揮発させると、クルミの残渣は底に溜まって上澄みの油脂を回収できる。この件に関しては、溶剤が自然に揮発するの待つ間に油脂が劣化するので、工業的にはnヘキサンを使用するのであるとのご指摘をメーカーの技術者ら賜った。ただし、アトリエで試すなら、有機溶剤を揮発させるのだから、今なら低毒性ペトロールを使うのがいいのかもしれない。いや、そもそも素手で絞るだけで止めておいた方がいい。

簡易搾油機で亜麻仁油を搾る

しかし油彩画家なら亜麻仁油を搾ってみたいところである。以上に出回っている1万円台の搾油機を買って試してみた。怪しげな機械に見えるが搾油することは可能である。ただし、大量の種子を搾るのは難しい。耐久性もなさそうで、おそらくなんらかの不具合で機械の寿命は早く尽きるであろう。

亜麻仁はふつうのお店では売っていないけれども、ネットで探せばすぐに手に入る。私はポプリ用の亜麻仁を1kgほど買って実行したが、だいぶ余った。

私が購入したのは、OilPressMachine 搾油機 卓上油搾り機というものである。購入時9,000円ほどだった。Amazonのレビューを見ると、評判は悪い。

説明書はA41枚で、英語と中国語の表記であった。搾油機に限らずこういうものは多い。どの機械でも似たような仕組みであろうから、以下に手順を書き残す。ハンドルが上手く回せるような場所(テーブルなど)に設置。しっかりした場所に設置しないといけない。大まかに組み立てたら、圧搾ケージに圧搾ケージキャップを回し込み、それからさらにターミナルアジャストメントキャップを回して締める。アルコールランプの綿芯(15cmくらい)を、付属のワッシャー(円形で中央に穴が空いている金具)に通し、外側に0.5cm出して、長い方は燃料ボトルの中へ。あまり燃えすぎてもよくないので、すこしだけ芯を外にだせば充分であろう。燃料ボトルには燃料(ケロシンまたはアルコール)を入れる(ケロシンは灯油?)。私は常備しているエタノールを使用。普通はメタノール? 圧搾ケージを約7分ほど加熱。オイルを確実に出させる為で、これがないとまずほとんどの種子は人力で搾油するのは困難かと思われる。圧搾ケージが50℃~70℃に達したら、材料をプレス機の注入口に入れることができると説明にあるが、アルコールランプで熱すれば当然あっという間にかなり高温になる。しかし、圧搾ケージ全体が温まるにはやはり7分くらいはかかるのか。抽出中も加熱は継続しておくのだろうけれど、火加減が難しい。圧搾ケージが充分熱せられたら、注入口から材料を投入。圧搾の開始時、ターミナルアジャストメントボルト(圧搾ケージの先についている回せるパーツ)はノーマル位置がよい。もし放出される塊が固すぎたり、ハンドルを回すときの抵抗力が強すぎるときは緩める。逆に放出物にオイルがまだ残っているような場合は締める、というふうに指示されているが、放出される種子残渣が固いと、詰まってしまってどうしようもなくなることがあるので、そこそこオイリーで緩めな状態で良しとした方がいいんじゃないか。種子を入れてクランプを回して圧搾するのですが、先端のキャップの小さな穴から残渣が出てくる。油は圧搾ケージの根元の細い穴から出てくる。もし上手くいったら、休まずに搾り続けた方がいいであろう。手を止めると、種子が焼けてくるし、残渣が固くなって詰まってしまう。

搾油直後は、このような濁った色の油だが、しばらく置いておけばゴミが沈殿して綺麗な油になる。

素晴らしい。いかにも亜麻仁油である。この後は本サイトの「乾性油の精製」の工程に進んで欲しい。

厳密にはコールドプレスではない。コールドプレスの搾油機も販売されている。試していないけれども、4~5万円以上に製品になってくると、あくまで家庭用だが、動作も安定してくるようである。買ってもいいのだけれども、そんなに使わないだろうという予感がし過ぎる。

オリーブオイル

ここからは蛇足と言えるが、オリーブオイルを搾ってみようと思う。オリーブオイルは不乾性油なので、このサイトで取り上げるものではないのだけれども、搾油方法としては独特なので搾油話のついてである。ほとんどの植物油脂は種を搾油するのだが、オリーブは果実から油を得るとの話を聞いて確認したくなったのである。

というわけでこちらがオリーブの実です。この為にオリーブの木を購入しました。なお、緑の色の果実はまだ堅いので、黒いものだけ採るべきだったようです。

ビニールのパックに入れて手で揉んだり潰したりすること1時間。

二重のガーゼにくるんで搾る。

はじめは濁った混濁液の状態であるが、日光のあたる場所に置いておくと、次第に三層に分離する。おそらく下が水溶性の液体、中間の白いものが水溶性の粘性物質、そして上層がオリーブオイルなのであろう。たったこれくらいしか取れないのか。試しに食してみたが、確かにオリーブオイルであった。オリーブの実はものすごく苦いので、本物のオイルも苦いかと思っていたが、そんなことはなかった。まろやかで美味であった。

参考文献

農山漁村文化協会「そだててあそぼう オリーブの絵本」
農山漁村文化協会「つくってあそぼう 油の絵本」

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