ウェルド

概要

ウェルドは西洋の代表的な黄色の植物染料である。私はThompson, Daniel V.の The Materials and Techniques of Medieval Paintingで初めて存在を知ったが、西洋の古画の顔料、染料について読むと、ウェルドはかなり頻出してくる代表的な黄色染料である。

ネット上で種を購入できたが、発芽率させることができなかった。あるとき、専門家向け顔料を製造されている方のところで、ウェルドのレーキ顔料を見ることができた。その後、鳥越一穂氏が海外から種を購入して送ってくれたので、それでようやく発芽させることができた。それから現在までウェルドについて知ったことを以下にまとめてみる。

栽培

日本のショップでも希に種が販売されているが、発芽率がわるく何度試しても芽が出なかった。おそらく在庫して年数が経ってしまうと発芽率が落ちるのであろう。産地から種を購入するのがよいと思われる。一度、発芽させれば、そこから種を採取して、その年か翌年蒔けば、簡単に発芽して繁殖するようになる。

ウェルドは二年草である。最初の年は地面に葉を広げる、いわゆるロゼットという形状になる。冬を越して翌年に花茎が伸び始めて、よく成長すると1メートルほどにもなって、先端に花を付ける。そこにはやがて種が実る。染料としては花茎を刈って収穫する。ロゼット時の葉を取ってもいいようだが、それは試していない。

種は春に蒔くのと、秋に蒔く方法がある。プランターに培養土を敷き、種を蒔く。非常に小さな種なので覆土は控えめでよい。ショップから購入した種の場合は、かなり多めに種を蒔いて、土が乾燥しないようにプランターの上をビニールで覆い、そして太陽光のよく当たるところに置いておく。発芽にはかなりの日数を要することがあるので、気長に待つ。

写真は晩秋に発芽させたウェルド(かなり積雪の下にあったので、葉が茶色くなっているがふつうは緑である)。発芽させる為に多めに蒔いたから、密集して生えているが、大きくする為には、これは地面か他のプランターに移植する。けっこう大きくなるので、かなり離して移植した方がよい。

2年目になると写真のような花茎が伸びてくる。しかし、条件によっては1年目に出てきてしまって、その場合は早めに寿命を終えてしまうかもしれない。二年草としてうまく育てると大きくなるようである。

染料を多く得る為の育て方であるが、wikipediaによると、乾いた砂がちの土壌に生えたものの方が、肥えて湿った土壌にあるものよりもよく、色素が最も多いものを得るには、実が大きくなる前に刈った方がよくて、そうしないと色素が減少するようである。

Good weld for dye must have flowers of a yellow or greenish color, and abound in leaves; that which is small, thin-stemmed, and yellow is better than that which is large, thick-stemmed, and green; that which grows on dry, sandy soils is better than that produced on rich and moist soils. For the greatest production of coloring matter, the plant should be cut before the fruits show much development, otherwise the pigment diminishes.

Wikipedia “Reseda luteola

その他のwebサイトの情報によっても、ウェルドで明るい黄色が得られないことの原因には土壌が必ず挙げらている。日本の土壌はだいたい肥沃で、黒々している。現在考えているのは、鉢底用石や川砂などを混ぜ、そして石灰などで土壌を西洋寄りにpH調整して育てるというものである。

大きな実がつく前に刈るということに関しては、そうすると、種を採る株と、染料を得る株は別にした方がよさそうである。

染色

数年前は海外のサイトでも情報は限られていたのだけれども、現在は種も染料もいくつものwebショップが販売している。乾燥葉、または抽出ウェルドという商品も多い。乾燥葉は少々購入しただけではまとまった染料とならないので、抽出ウェルドというのが気になるところである。

しかし、ここでは育成したウェルドで染色する方法について考えてみると、生葉から抽出する方が色は明るく鮮やかになるようである。また、抽出ウェルドという商品も多くあって、それを使えば染色の手間はだいぶ省けそうである。

※情報整理中。後日加筆予定。

染色方法は、日本語で読めるものでは、エセル・メレの『植物染色』がある。エセル・メレではミョウバンと酒石酸を媒染剤として使用している。

私は上記を参考にシルクを染めてみたことがある。私の技術的な問題から、あまり濃くは染まっていないが、確かに黄色である。茶色や黄土色でもない。なお、問題の解決としては、やはり土壌の工夫をしてみようかと思う。

レーキ顔料

レーキ顔料化は他の植物染料と同様かと思われるが私は試みたことがない。ただしウェルドの栽培に成功したので、数年前から顔料を入手できるようになった。炭酸カルシウムによるレーキ顔料と、ミョウバンによるもの、2種類のサンプルが手に入ったが、油絵具と相性がよさそうなのは、炭酸カルシウム版であると感じた。

大変やわらい色調であるが、若干は退色することを念頭に描画した方がよいと考えている。植物染料の中では耐光性は良い方なのではないという印象はあるが、それも観察中である。

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